休職復職面談を通じて予防医療と産業医のサポートを充実させる方法
休職復職面談を通じて予防医療と産業医のサポートを充実させるために、予防医療における産業医の役割と休職復職面談の流れを紹介します。
結論から言うと、休職復職面談を予防医療として機能させる鍵は、「主治医の診断書→産業医面談→復職判定と就業制限→復職後フォロー」という標準ステップを会社のルールとして明文化し、毎回ブレずに運用することです。
一言で言うと、「復職面談=復職させるかどうかの”通過儀礼”」ではなく、「安全に働き続けられるかを確認し、必要な復職判定と就業制限を具体化するプロセス」として、産業医と人事・現場が一体で設計することが重要です。
この記事のポイント
休職復職面談の目的は、「本当に復職可能な状態かの確認」と「復職時の就業制限・配慮内容の整理」の2つであり、復職判定は主治医の診断書だけでなく産業医の医学的評価と職場状況を総合して決めます。
厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」では、休業開始から復職後フォローまでを5ステップで整理し、第3ステップで産業医等が復職可否と職場復帰支援プランを検討することが推奨されています。
メンタル不調の再燃・再発を防ぐ予防医療としては、「短時間勤務・残業禁止・業務負荷の段階的増加」といった就業制限を明確にしたうえで、復職後1か月・3か月・6か月の産業医フォロー面談を組み込むことが有効です。
今日のおさらい:要点3つ
1. 復職面談のゴールは、「復職可否の判断」と「復職後の就業制限・配慮内容(復職判定の条件)」を整理し、事業者が最終決定できる材料をそろえることです。
2. 休職復職の標準フローは、「休職開始→主治医の復職可診断→産業医面談→復職判定・就業制限→復職後フォロー」の5ステップで、厚労省の手引きに沿って社内ルール化することが重要です。
3. 復職判定で過度に甘い判断・厳しすぎる判断を避けるには、「生活リズム・通勤能力・業務遂行能力・職場側の受け皿」の4点を産業医が体系的に確認することがポイントです。
この記事の結論
結論:休職復職面談を予防医療として機能させるには、「厚労省の職場復帰支援の手引きに沿った5ステップ」と「産業医による復職判定と就業制限の明文化」「復職後フォロー面談」の3点をセットで設計することが不可欠です。
一言で言うと、「診断書が出たらすぐ復職」ではなく、「産業医面談で復職判定→短時間勤務・残業制限などの就業制限を付けて段階復帰→定期フォロー」という流れが、再休職を防ぐ王道です。
最も大事なのは、復職判定を”主治医か産業医か”の二者択一と誤解せず、「主治医=治療側」「産業医=職場側」「事業者=最終決定者」という役割分担を明確にし、三者連携で判断することです。
企業としては、就業規則や休職規程に「復職面談の実施」「産業医の復職意見の聴取」「就業制限の設定と見直し」を明記し、運用のバラつきをなくすことが、予防医療としての休職復職支援の基本です。
休職復職面談は何のために行うのか?(目的と予防医療としての意味)
結論として、休職復職面談の目的は「復職が安全かどうかを確認すること」と「復職後の働き方(復職判定に付随する就業制限)を具体的に決めること」です。
根拠として、産業医面談の解説では、復職面談の目的として「本当に復職が可能な状態か判断すること」と「復職時の制限内容(勤務時間・残業・業務内容など)を確認すること」の2点が明示されており、これらを踏まえて産業医が事業者に意見書を提出するとされています。
一言で言うと、「復職面談=単なる挨拶ではなく、”この条件なら安全に戻れる”というラインを産業医と会社で合意する場」です。
復職判定の基本的な考え方(誰がどう決めるのか)
結論から言うと、「主治医が医学的に復職可と判断し、産業医が職場との適合性を評価し、その意見を踏まえて事業者が最終的に復職を決定する」のが基本構図です。
厚労省の「職場復帰支援の手引き」では、第2ステップとして「主治医による職場復帰可能の判断」、第3ステップとして「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」が整理されており、この段階で産業医が主治医の意見を踏まえつつ、職場環境や業務内容を評価し、復職の可否と条件について意見を述べることが示されています。
最終決定権は事業者にあり、産業医の意見書を参考にしながら、復職を認めるか、就業制限を付けるか、休職延長とするかを判断することになります。
復職判定で確認すべき4つのポイント(生活リズム・通勤・業務・職場環境)
一言で言うと、「復職判定の核心は”生活リズム+通勤+業務遂行+職場の受け皿”の4点チェック」です。
復職面談の解説では、産業医が復職可否を判断する際の基準として、次のようなポイントが挙げられています。
- 規則正しい生活ができているか(起床・就寝時間、日中の活動量)
- 通勤が可能か(ラッシュ時の電車利用、車の運転など)
- 元の業務または軽減業務を安全に遂行できる集中力・持久力があるか
- 職場側に業務軽減や短時間勤務などの受け皿があるか
これらを主治医の診断書と本人の話、会社側の情報を総合して評価し、「通常勤務可」「短時間勤務であれば可」「就業制限付きで可」「まだ不十分で復職不可」といった復職判定が行われます。
予防医療としての意味(再休職・労災リスクを減らす)
最も大事なのは、「復職面談は”復職させるため”というより、”安全に働き続けてもらうため”に行う」という視点です。
心の健康問題の指針では、メンタルヘルス対策を一次予防(発症予防)、二次予防(早期発見・早期対応)、三次予防(職場復帰支援と再発予防)の3段階で整理しており、休職復職面談はまさに三次予防の中核的な施策に位置づけられています。
復職直後に無理をさせて再休職になると、本人のキャリアダメージ・職場の負担・企業のリスクが一段と大きくなるため、「少し物足りないくらいの就業制限から始めて段階的に戻す」ことが、予防医療としては合理的な選択です。
休職復職面談の具体的な流れと、復職判定・就業制限の決め方は?
結論として、標準的な休職復職フローは「①休職開始・診断書提出→②主治医の復職可診断→③産業医面談→④復職判定・就業制限の決定→⑤復職後フォロー」という5ステップで構成されます。
根拠として、厚労省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、病気休業開始から復職後のフォローアップまでを5ステップで示し、その中で産業医等が職場復帰の可否判断と職場復帰支援プランの作成に関与することが明記されています。
一言で言うと、「フローを社内で図式化し、産業医・人事・上司・本人がいつ何をするかを共有しておくこと」が、スムーズで安全な休職復職を実現するコツです。
休職〜復職判定までの5ステップ(メンタルヘルス手引きに沿って)
結論から言うと、次の5ステップを社内規程として押さえるのがベストです。
第1ステップ:病気休業開始と休業中のケア
休職開始時に主治医の診断書を提出してもらい、上司や人事・産業保健スタッフが定期的に連絡を取り、安心して休める環境を整えます。この段階では、本人に過度なプレッシャーを与えないよう配慮しつつ、必要な情報提供と連絡体制の確保を行うことが重要です。
第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
本人から復職の意思表示があり、「職場復帰可能」と記載された診断書が出た段階で、職場復帰プロセスがスタートします。主治医の診断書には、復職可能時期の目安や、復職にあたっての配慮事項が記載されていることが望ましいです。
第3ステップ:職場復帰の可否判断と職場復帰支援プラン作成
産業医等が情報を収集し(主治医意見、本人の状態、職場環境など)、復職可否と具体的な就業制限を含む職場復帰支援プランを検討します。この段階が最も重要であり、産業医は本人との面談だけでなく、人事担当者や上司からの情報収集も行います。
第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
産業医の意見書や支援プランを踏まえ、事業者が最終的に復職の可否と復職日、勤務条件を決定します。決定内容は本人に書面で通知し、復職後の働き方について認識の齟齬がないようにすることが大切です。
第5ステップ:復職後のフォローアップ
復職後1か月・3か月・6か月などのタイミングで産業医面談や上司面談を行い、再発予防と職場環境の改善を継続します。フォローアップの結果に応じて、就業制限の緩和や継続を判断していきます。
この流れを就業規則や社内マニュアルに落とし込み、全社員に共有しておくことが、トラブルを防ぐうえでも重要です。
復職判定での具体的な確認事項と就業制限の例
一言で言うと、「復職判定の結果は”可・不可”だけでなく、”条件付き可(就業制限付き)”を含めたグラデーションで考える」のが現実的です。
復職面談で産業医が確認すべき主な項目として、以下が挙げられています。
- 本人の復職意思と不安の有無
- 休職期間中の生活リズム(起床・就寝・日中の活動)
- 通勤方法と通勤の負担
- 業務内容に対する不安やトリガーとなる要素
- 職場の人間関係や配置の見通し
- 服薬状況・通院状況
そのうえで、就業制限の具体例としては次のようなものがあります。
- 復職後1か月は短時間勤務(例:1日4〜6時間、週3〜4日勤務)
- 一定期間、時間外労働・休日出勤禁止
- 高ストレス業務・夜勤・深夜勤務などの一時的な免除
- 責任の大きいポジションから一時的に業務を軽減
- 出張や外出の制限
- 対人業務の軽減(窓口対応や顧客折衝の免除など)
厚労省の手引きでも、復職当初は「時間外労働や車両運転などは制限し、軽減業務とする」ことが推奨されており、それを産業医意見書に明記することが推奨されています。
復職後フォローと再発予防のポイント(予防医療としての三次予防)
最も大事なのは、「復職で終わりではなく、復職後6〜12か月のフォローを計画に組み込む」ことです。
職場復帰支援の手引きでは、第5ステップとして「職場復帰後のフォローアップ」が独立した段階として示されており、疾患の再燃・再発、新たな問題の発生有無、勤務状況、職場復帰支援プランの実施状況などを定期的に確認し、必要に応じてプランの見直しや職場環境改善を行うことが求められています。
具体的には、復職後1か月・3か月・6か月のタイミングで産業医面談を設定し、「勤務時間の延長可否」「疲労感・睡眠の状態」「人間関係のストレス」などを確認しながら、就業制限の解除・変更を段階的に進める運用が推奨されています。
フォローアップ面談では、本人の体調だけでなく、職場側の状況(業務量の変化、人間関係、サポート体制など)も確認することで、再休職リスクを早期に発見し、対策を講じることができます。
休職復職支援を成功させるための組織体制
人事・上司・産業医の役割分担
休職復職支援を円滑に進めるためには、関係者の役割分担を明確にしておくことが重要です。
人事担当者は、休職・復職に関する制度面の説明や手続きの窓口となり、休職中の連絡調整や復職後の労務管理を担当します。
直属の上司は、復職後の業務内容の調整や日常的なフォローを行い、本人の状態変化に気づいた場合は速やかに人事や産業医に報告する役割を担います。
産業医は、医学的な観点から復職可否を判断し、就業制限の内容を具体的に示すとともに、復職後のフォローアップ面談を通じて再発予防に貢献します。
就業規則への明文化の重要性
休職復職に関するルールは、就業規則や社内規程に明文化しておくことが重要です。明文化すべき項目としては、以下のようなものがあります。
- 休職の要件と休職期間
- 休職中の連絡方法と頻度
- 復職の手続き(診断書の提出、産業医面談の実施など)
- 復職判定の基準と決定権者
- 就業制限の種類と期間の目安
- 復職後のフォローアップ体制
これらを明文化しておくことで、担当者による対応のバラつきを防ぎ、公平で一貫性のある休職復職支援が可能になります。
よくある質問
Q1:復職判定は誰が決めるのですか?
復職判定は、主治医の診断書と産業医の意見を踏まえ、最終的には事業者が決定します。産業医は復職可否と就業制限について医学的意見を出す立場です。
Q2:産業医が復職を認めないことはありますか?
あります。生活リズムが乱れている、通勤が困難、業務遂行能力が不十分、職場の受け皿が整っていないなどの場合は、復職不可や休職延長を意見することがあります。
Q3:復職面談は法律で義務付けられていますか?
法律上の明文義務はありませんが、厚労省の職場復帰支援の手引きでは復職前の産業医面談が事実上の標準とされ、就業規則で義務化している企業も多いです。
Q4:就業制限にはどのような内容がありますか?
短時間勤務、残業禁止、夜勤・深夜勤務禁止、高ストレス業務からの一時的な外し、出張制限などがあり、期間と内容を産業医意見書に明記します。
Q5:復職後のフォローはどのくらい続けるべきですか?
一般的には1年程度を目安に、少なくとも1か月・3か月・6か月時点での産業医面談や上司面談を行い、再発リスクと業務負担を確認することが推奨されています。
Q6:診断書があれば必ず復職させなければなりませんか?
いいえ。主治医の診断書は重要な参考資料ですが、最終判断は事業者であり、産業医の意見や職場環境、業務上の安全性を総合的に考慮して決めます。
Q7:復職面談で上司や人事が知ってよい情報の範囲は?
病名や詳細な治療内容ではなく、「勤務上必要な情報(就業制限・配慮内容)」に限定して共有するのが原則で、健康情報と就業配慮情報を分けて管理することが推奨されています。
Q8:メンタル以外の病気でも同じような復職フローが必要ですか?
はい。心身の状態にかかわらず、安全に業務ができるかを確認するために、産業医による就業判定と必要な就業制限を検討するフローを基本としておくことが望ましいです。
まとめ
結論:休職復職面談を通じて予防医療と産業医のサポートを充実させるには、「厚労省の職場復帰支援の手引きに沿った5ステップ」と「産業医による復職判定と就業制限の明確化」「復職後フォロー」を組み合わせることが不可欠です。
復職判定では、主治医の診断書だけでなく、産業医が生活リズム・通勤能力・業務遂行能力・職場側の受け皿を確認し、安全に復職できる条件(復職判定+就業制限)を具体的に示すことが重要です。
企業は、就業規則や休職規程に休職復職面談の流れと産業医関与の位置づけを明記し、標準化されたプロセスとして運用することで、再休職や労災リスクを減らし、予防医療としての職場復帰支援を強化すべきです。
休職復職支援は、単なる人事手続きではなく、従業員の健康と企業の生産性を両立させるための重要な取り組みです。産業医と人事・現場が連携し、一人ひとりの状況に応じた丁寧な対応を心がけることで、安心して働ける職場環境の実現につながります。

