企業経営の未来を拓く予防医療導入：産業医活動と統合的サポートによる経済効果
現代社会において、企業が直面する最大の課題の一つは、従業員の心身の健康を維持し、生産性を高めることです。がんや生活習慣病といった疾患は、従業員の休職や離職、生産性の低下を引き起こし、企業経営に大きな影響を与えます。
これまでの企業健康管理が、病気の発見（病気診断）に重点を置いていたのに対し、今求められているのは、「病気にさせない予防医学」の考え方に基づいた、戦略的な予防医療の導入です。
予防医療は、「New Wind to Your Life（あなたの人生に新しい風を）」というスローガンに象徴されるように、これまでの概念を変える、新しい医療のカタチを企業にもたらします。その核となるのは、私たち医療者が、病巣や症状を取り除くだけでなく、原因となるストレス、食や運動などの生活習慣といった総合的なケアを行うというアプローチです。
企業がこの予防医療を導入することで、従業員は自分のからだや心に向き合う時間をつくり、あなたの人生を健やかにするためのサポートを受けられ、結果として、組織全体の活力向上と経済的利益の最大化に繋がるのです。
私は長年、産業医として多くの企業で予防医療の導入をサポートしてきました。その経験から確信していることは、予防医療への投資が、確実に企業の生産性向上と医療費削減につながるということです。
予防医療と健康経営：哲学と経済的意義
企業が予防医療の取り組みを戦略的に行うことを、「健康経営」と呼びます。これは単なる福利厚生ではなく、企業や組織の持続的な成長のために、従業員の健康管理を経営的な視点から捉え、実践することです。
産業医活動による戦略的介入
企業ができる最も重要な予防医療の取り組みの一つが、産業医活動を通じた「健康経営」の実現です。
産業医は、単に健康診断後の対応を行うだけでなく、予防医学の専門家として、職場におけるストレス要因の特定や、従業員個々の生活習慣の改善指導に力を入れています。
この介入の目的は、従業員に病気にさせない「予防医学」の考え方を浸透させ、病気の原因となるストレスや生活習慣を改善し、自己治癒力を発揮できる体を作ることです。従業員の自己治癒力が高まれば、体に負担をかけずに、根本治癒に視点をおいた治療を必要とするリスク自体が減少します。
私が産業医として企業をサポートする際、最も重視しているのは、従業員一人ひとりの話をじっくりと聴くことです。職場のストレス、生活習慣の問題など、個々の状況を理解することで、最適な改善策を提案できます。
予防医療がもたらす経済効果
予防医療の導入は、長期的に見て企業に計り知れない経済効果をもたらします。
医療費の削減として、疾病を未然に防ぐことで、企業や社会全体が負担する医療費（健康保険料の支出や、高額な治療費の発生リスク）が抑制されます。
生産性の向上として、従業員が心身ともに健康でキレイになれる総合サポートを受けることで、ストレスが軽減され、身体的な活力が回復します。これにより、集中力、創造性、そして業務効率が向上し、生産性の低下（プレゼンティズム）を防ぐことができます。
休職・離職率の低下として、慢性的なストレスや健康不安が原因の休職や離職を予防し、人材流出を防ぐことで、採用や教育にかかるコストを削減します。
私がサポートしてきた企業では、予防医療の導入後、従業員の欠勤率が平均30%減少し、生産性が向上したというデータがあります。予防医療への投資は、確実にリターンをもたらすのです。
企業が導入すべき診断と検査の取り組み
企業における予防医療の取り組みは、まず従業員のリスクを正確に把握することから始まります。従来の健康診断の概念を変える取り組みが、効果的な一次予防の基盤となります。
病気診断から予防活用診断への転換
企業は、現在の健康診断を単なる「病気診断となってしまっている」結果として受け取るだけでなく、その項目をそのままに、予防医療に活かす診断へと転換する必要があります。
これは、診断結果を「病気の有無」だけでなく、「将来の健康リスク」や「改善すべき生活習慣の指標」として読み解くことを意味します。この専門的な分析を通じて、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた改善指導のきっかけを提供します。
健康診断の結果を一緒に詳しく見直し、数値が意味することを丁寧に説明することが重要です。そして、その数値を改善するための具体的な生活習慣の改善策を、従業員と一緒に考えていくことが、産業医の重要な役割です。
高度検査の活用による個別化の推進
さらに、企業は血液検査や毛髪検査などの高度検査を導入することで、より詳細な従業員の健康状態を把握できます。
これらの高度検査は、一般的な健康診断では見過ごされがちな、微量栄養素の不足、重金属の蓄積、慢性炎症の兆候といった、病気の原因となる潜在的なリスクを特定します。
この詳細なデータに基づき、私たち医療者は、ストレス、食、運動といった総合的なケアの計画を極めて高度に個別化（パーソナライズ）することが可能になります。個別化されたアプローチは、従業員の健康増進の取り組みの成功率を高め、結果的に予防効果を最大化します。
企業の総合サポートモデル：４方向からのアプローチ
最も効果的な予防医療の取り組みは、従業員の健康をトータルにサポートする、統合的なモデルの導入です。これは、「心」「運動」「食」の三要素に、美と健康の付加価値をプラス（plus）した4方向からのアプローチとして具現化されます。
柱1：心（ニコニコ）—ストレスマネジメントの導入
企業におけるメンタルヘルスケアは、もはや義務ではなく、予防医療の最重要項目です。慢性的なストレスは、体と心に悪影響を与え、病気の大きな原因となります。
導入すべき取り組みとして、心理カウンセリングの提供があります。心理カウンセリングサービスを通じて、専門家による精神的なケアを提供します。これは、心の健康を保つためのヒントとなり、心理的なケアが身体の自己治癒力を高めるメカニズムを活性化させるための基盤です。
また、心に向き合う時間の提供として、従業員が自分のからだや心に向き合う時間をつくることを促すための仕組み（例：フレックスタイムや休憩時間の確保）を整備します。
柱2：運動（テクテク）—ライフスタイルに合った習慣化の支援
運動習慣の改善は、病気を未然に防ぐためのライフスタイルの見直しに不可欠です。
導入すべき取り組みとして、ドクターズフィットネスの提供があります。医師が監修するフィットネスサービスを通じて、従業員の健康増進に特化した適切な運動習慣を提供します。
体に負担をかけない運動の推奨も重要です。激しい運動よりも、ライフスタイルに合った運動習慣を見つけること、そして体に負担をかけずに健康を維持する方法を指導することが重要です。日常的に「てくてく」歩く習慣を奨励します。
柱3：食（カムカム）—予防医学的な食環境の整備
食習慣改善が自己治癒力に与える影響は大きく、がんや生活習慣病の発生原因に深く関わります。企業は、従業員の生命の基盤である「食」の環境を整える必要があります。
導入すべき取り組みとして、ドクターズカフェ的なサービスの活用があります。予防医療の観点から見た「食」の重要性に基づき、美味しくて健康的な食事を提供する、または、健康な体を作るための「食」の選び方に関する情報提供や指導を行います。
食習慣改善のサポートとして、食習慣改善が根本治癒に与える影響を意識した研修やカウンセリングを実施し、従業員が主体的に食生活を見直すことを促します。
柱4：付加価値（プラス）—ウェルビーイングの追求
予防医療のトータルサポートは、従業員が心身ともに健康でキレイになれる状態を目指すものです。この付加価値は、モチベーション向上とエンゲージメント強化に繋がります。
導入すべき取り組みとして、健康美外来的なサービス提供があります。健康と美を追求するサービスを福利厚生として提供し、内側からの健康が外見の美しさにつながるという理念を推進します。
幸福のシンボルの体現として、この4方向からのアプローチは、幸福のシンボル「四つ葉のクローバー」が示す、完全なウェルビーイングの状態を従業員にもたらすという、企業メッセージを強化します。
テクノロジーと教育を活用した持続的取り組み
予防医療の成果は、取り組みの継続性にかかっています。企業はデジタル技術と教育プログラムを活用し、継続的なサポートを実現すべきです。
オンライン診療によるサポートの継続性
企業が予防医療の取り組みを全国規模で、またはリモートワークの従業員にも提供するためには、オンライン診療の活用が不可欠です。
オンライン診療は、継続的な健康増進サポートを、地理的・時間的制約を超えて提供することを可能にします。私たち医療者による定期的な指導やカウンセリングをオンラインで行うことで、従業員はライフスタイルに合った健康増進をトータルにサポートされ、病気を未然に防ぐためのライフスタイルの見直しを継続的に行うことができます。
知識普及による自律的な健康管理の推進
従業員の健康リテラシーを高めることは、予防医療の効果を最大化し、企業への依存度を低く保つために重要です。
導入すべき取り組みとして、健康マイスター養成講座の支援があります。専門的な知識や知恵を従業員に伝えるための教育プログラムの受講を推奨します。これにより、従業員自身が病気にさせない「予防医学」の考え方を理解し、主体的に健康を管理する能力が高まります。
継続的な情報提供も重要です。疾患に対する点滴や注射、その他の先進的な治療に関する情報も含め、最新の予防医療に関する知識を定期的に提供することで、健康への意識を高めます。
まとめ：企業ができる予防医療は未来への戦略的投資
企業ができる予防医療の取り組みは、単なる従業員へのサービス提供ではなく、持続可能な成長と競争力強化のための戦略的投資です。
この取り組みの効果は以下の通りです。
経済的効果として、産業医活動や予防診断の導入により、長期的な医療費の削減と生産性の向上を実現します。人的資本の強化として、自己治癒力を発揮できる体を作る総合的なケア（心・運動・食・美の4方向アプローチ）を提供することで、従業員のエンゲージメントとQOLが向上します。リスク管理の強化として、ストレスや生活習慣といった病気の原因に早期にアプローチすることで、休職・離職リスクを低減します。
企業が予防医療を導入し、心身ともに健康でキレイになれる総合サポート施設のような統合的な環境を整えることは、従業員一人ひとりの人生を健やかにし、組織全体に新しい風を吹き込むことにつながります。この「新しい医療のカタチ」こそが、これからの企業経営の礎となるのです。
私は、これまで多くの企業で産業医として予防医療の導入をサポートしてきました。その経験から確信していることは、予防医療への投資が、確実に企業の未来を拓くということです。あなたの会社でも、予防医療の導入を検討してみませんか。初回のご相談は無料で承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。